樋口一葉と「文学界」
一葉偲ぶぐさ

吉松勝郎著
 
四六判 340頁 2.100円(税込み)

「一葉日記」の深奥に迫る!

多くの作品を残し、時代を超えて感動を与え続ける「樋口一葉」
彼女の残した日記から見えてきたものとは!ペーソスかそれともアイロニーか?

明治二十六年(一八九三)三月二十一日、本郷菊坂町に一人で一葉を訪ねてからおよそ三年と三月、藤村、孤蝶、秋骨、眉山、上田敏などを引き連れて、絶えず一葉を訪問し、一葉に書くことへの「自信」と「勇気」を与え続けたのは平田禿木であり、仲間の同人たちであった。そして、彼らの背後にいて、「文学界」を主宰し、早くから一葉の才能に気づき、絶えず一葉の寄稿を促し続けた星野天知の存在を忘れてはならない。彼らが一葉に与えた最大の贈りものは、やはり「自信」と「勇気」であった。
 勝気で驕児であった一葉は、反面、気の弱い一面も併せもっていた。詩人に共通し、しかも彼らが最も忌む怯懦の心、即ち詩人特有の負の片鱗である。
 小学校教育を六年間受けただけで、いつも口癖のように「わたしのようなものが」と言っていた一葉、その一葉の作品を絶賛し、寄稿を執拗に求め、創作意欲を絶えず駆り立てた彼らの影響は大きかった。彼らは最高学府で英文学を学び、それでいて、日本の古典文学へ深い関心を寄せ、そして、それに精通していた稀有な文士たちであった。